仕事や家事を頑張ってホッと一息、ティータイムに飲むために紅茶を入れたり緑茶を入れたり・・・。好みのお茶を飲むとリフレッシュできますよね。
このように、「お茶」といっても、紅茶や緑茶、ウーロン茶など世界中には様々なお茶の種類があり、味も見た目も異なります。そんなお茶がすべて同じ「茶の木」の葉っぱから作られているのです。
同じお茶の葉なのに、どうしてこんなに見た目も味も風味も異なるお茶になるのでしょうか?
お茶の原料とは?
緑茶も紅茶もウーロン茶も、原料となるのはツバキ科・ツバキ属の常緑樹です。
大きく分けて中国型の品種とインド型の品種に分かれ、中国型は低木で高さ1~5m、細い茎に細長い葉が特徴で、インド型は8~15mもの高さに生長する高木で、葉も比較的大きくたくさん茂るのが特徴です。ちなみに、日本のお茶畑で栽培されているのは中国種です。
同じ原料から違うお茶に・・・
原料は同じ「茶の木」ですが、加工方法の違いによって緑茶やウーロン茶、紅茶などに変化します。
その加工方法とは発酵させずにそのままお茶にするのか、茶葉を発酵させるかによって異なりますし、同じ発酵させるものでもどの程度まで発酵させるかによっても仕上がりが異なります。では、その発酵の度合いによってどのように変化するのかを見ていきましょう。
不発酵茶(緑茶)
日本でなじみ深い「緑茶」は、摘み取った茶葉をできるだけ新鮮なうちに「蒸す」「釜で炒る」「煮る」など、熱を加えることによって、茶葉自体が持っている“酸化酵素”のはたらきを止め、発酵させずにお茶にします。
日本では摘み取った茶葉を蒸気で蒸す「蒸し茶」が主流です。発酵させないことから鮮やかなグリーンと、茶葉のフレッシュな香りが特徴です。また、ビタミン類やカフェイン、タンニンなどが豊富に含まれます。
半発酵茶
半発酵茶というのは、茶葉自体が持つ酵素による発酵をある段階の途中で止めて作られたお茶です。
代表的なものに「ウーロン茶」がありますが、発酵の度合いは種類によって20~80%と幅があり、「白茶(パイチャ)」「黄茶(ファンチャ)」「青茶(チンチャ)」と発酵度合いごとに種類が分かれます。
弱発酵茶(白茶)
「白茶(パイチャ)」は、茶の新芽でまだ白い毛が目立つような若葉を摘み取り、自然発酵が浅い状態で作られるお茶です。
緑茶の場合には摘み取ってできるだけ早く加熱することによって茶葉の発酵を止めてしまうのに対し、「白茶」の場合には、摘み取った茶葉を太陽で天日にさらしたり、風通しの良い日陰などで放置したりして自然に萎(しお)らせた後(この過程を“萎凋”といいます)で完成させたものです。
この過程で白茶独特の甘い香りと味が生まれ、まろやかな口当たりのお茶になります。代表的なものに「白豪銀針」や「白牡丹」「寿眉」などが代表的です。
弱後発酵茶(黄茶)
「黄茶(ファンチャ)」とは、他のお茶とは異なる方法で製造される珍しいお茶です。
摘み取った茶葉を半分より水分やや多めに残して乾燥させた後、茶葉を積み重ねて湿った布をかぶせて高温多湿の場所に放置する「悶黄(もんおう)」という工程が加わります。
この過程で茶葉に含まれるポリフェノールなどが酸化され、茶葉の色が緑から黄色へと変化することから黄茶と呼ばれています。
中国茶の中で非常に希少価値が高く、まろやかで香り高くほのかな甘みが特徴です。代表的なものに、「君山銀針(くんざんぎんしん)」「北港毛尖(ほっこうもうせん)」などがあります。
半発酵茶(青茶)
「青茶(チンチャ)」と聞くとあまり馴染みがないように聞こえるかもしれませんが、代表的なものが「ウーロン茶」です。
青茶は摘み取った茶葉を、平らなカゴやゴザに広げ、太陽のもとで発酵させ天日にさらして“萎凋”させます。こうして水分が少なくなってくると室内へと移し、茶葉を攪拌しながら酸化発酵を促進させていきます。
青茶の発酵度合いは20%~80%とかなりの幅があるため、作りたい茶葉の状態に合わせて熱を加えて発酵を止め、その後茶葉を揉む「揉捻作業」へと進めます。例えば、「文山包種茶(ぶんさんほうしゅ)」は、発酵度15%程度と低く、フレッシュで飲みやすくウーロン茶が苦手な人にもおすすめです。
「鉄観音」と呼ばれる種類では、発酵度30~40%くらい、「東方美人」や「紅烏龍」などは、同じ「青茶」でも発酵度合いが70~80%と最も高くなり紅茶に近い味わいになります。
全発酵茶
発酵茶(紅茶)
発酵茶である紅茶は、「全発酵茶」に分類されるとおり、茶葉を完全に発酵させたお茶のことです。
半発酵茶は発酵の途中の過程で加熱することによりそれ以上発酵させないようして作られるのに対し、紅茶は茶葉の発酵が完全に終了するまで置いた後にお茶になるため、タンニンが100%酸化され茶葉に含まれる“葉緑素”も分解されて茶褐色になります。
紅茶は「完全酸化発酵茶」といわれることがありますが、実際には生産される地域や茶葉の状態などを見ながら発酵が管理されているため、発酵度の違いで風味や味が異なります。豊かな香りが特徴で、フルーツや草花などの華やかで芳醇な香りが楽しめます。
後発酵茶(黒茶)
「黒茶(ヘイチャ)」とは、日本の緑茶のように摘み取った茶葉をすぐに加熱して“酸化酵素”のはたらきを止め、緑茶と同じような製法で製茶されます。
その後、麹菌などの微生物を用いて数ヶ月以上発酵させて作られるお茶です。「黒茶」は、茶葉そのままの形状の「散茶」と呼ばれるものと、発酵させる前に押し固めて成形した「緊圧茶」という2種類があります。
発酵期間が長くなるほどにまろやかな深みが出てきて、より美味しくなるといわれています。なかにはワインのように“ヴィンテージ(年代物)”も存在して価値が高くなります。
代表的なものに「普洱茶(プーアール茶)」がありますが、この黒茶だけが微生物のチカラを使った「本物の発酵食品」で、独特の風味が特徴です。
お茶の発酵方法は2種類
いかがでしたか? 今回は同じ「茶の木」から摘み取られた葉っぱから作り出される、さまざまなお茶の種類を調べました。
「発酵」の定義は“物質が微生物によって分解され人間に有益なものが生み出される物”ですから、厳密にいうと麹菌などを使った「黒茶」だけが発酵食品で、それ以外は本物の発酵食品とは呼べません。
ただ、お茶の葉そのものに含まれる“酵素”のはたらきで酸化発酵させる「半発酵茶」のウーロン茶や「全発酵茶」である紅茶も広い意味では“発酵食品”だということができます。それぞれのお茶には製法にともなって独特の特徴があり、味も香りも全く異なります。
世界中で愛されている紅茶、日本人になじみ深い緑茶だけでなく、機会があれば中国のお茶も飲んでみて、いろんなお茶の違いを味わってみるのはいかがですか?